宣教会研究に関する新視点と同時代人の肖像:労働司祭および地域開発都市計画研究者モーリス・デュクルー(1924-1985)の事例を通して
[講演会] マリヴォンヌ・プレヴォー (リール第1大学)
18:00〜19:45 601号室 フランス語
本発表では、地域開発・都市計画に関する研究指導資格論文を部分的に加筆して刊行した著作Catholicisme social et urbanisme. Maurice Ducreux et la fabrique de la Cité (1924-1985) (訳:「社会的カトリシズムと都市計画:モーリス・デュクルーと「都市」の創出(1924−1985)」、レンヌ大学出版、2015)の紹介を行う。
1950年より亡くなるまでの35年間「ミッション・ド・フランス (フランス宣教会) 」の司祭を務めたデュクルーは、国際的にも注目された半官半民の地域開発都市計画研究機関である仏・都市調査整備局 [Bureau d’Études et de Réalisations Urbaines、BERU]に創設メンバーとして参画、経営幹部として運営に取り組んだ。1973年から1977年まで共産党員として活動、パリ建築高等専門学校に応用社会科学の契約研究者として勤めた。
本研究では、従来の研究ではあまり解明されてこなかった以下の二点の繋がりに注目して分析をおこなう。第一に、「栄光の30年」と呼ばれるフランスの高度成長期における宗教および社会活動家グループの再編を、「社会団体」および「政治的偏向」という側面から検証すること。第二に、同時期における、都市および地域創出に関する構造・執行手段・決定手順・政策原理の変容を明らかにすること。著作では、以上の観点から、活動家たちのプロジェクト、国レベルでの改革の取組み、社会および都市の現状把握のための学術研究体制の動向が重なり合い、深化していく様相を示している。これらの大渦潮は新たな専門家集団を生み出し、利益の一般化および標準化、資金源の融合を引き起こし、運動家たちは宗教世界から世俗世界まで幅広い領域で活動を展開することとなった。他方、能力および分野横断的現象は、個々の差異およびその源泉を不鮮明にしている。モーリス・デュクルーは、社会学者が「有力外部者」と呼んだ二つの異なる世界に足を踏み入れた存在である。デュクルーの軌跡をたどることで、フランス・ベルギーおよびフランス語圏アフリカにおいて都市計画の専門家集団がいかに構築されたのかを明らかにする。同時に、フーコーが「考古学」と呼んだ方法を用い、地域開発および都市計画における職業実践を検証する。
【主催】日仏会館フランス事務所