10月
31
2013

マルセル・プルースト、『スワン家のほうへ』
1913年3月31日〜6月11日まで、添削のための張り紙
フランス国立図書館所蔵

【講師プロフィール】
エリック・ファイユ氏は、1963年生まれ。カフカ、イスマイル・カダレ、フィクションと全体主義などに関する評論のほか、中篇小説、長篇小説を発表。『私は灯台守』で1998年のデゥ・マゴ賞、『ナガサキ』にて2010年のアカデミー・フランセーズ小説大賞を受賞。

【要旨】
プルーストにおける緩慢を礼賛するのは、はかない時代、「読み捨て本」と言われるものが幅を利かせる時代になればなるほど、書斎にプルーストを備えているのがますます大きな救いになるからである。読者としてはもとより、だが作家としても、私はそう言いたい。「ウサギとカメ」の寓話にたとえるなら、プルーストはカメである。双肩に家を背負いながら、それでも遅れず、最初に到着する。プルーストは時間をかける。いわば「長距離ランナー」であり、スプリンターではない。ある意味、プルーストはお手本である。この作家は、私見によれば、フランス語の潜在的喚起力を最大限に引き出すことによって、ある詩的世界、ある雰囲気を醸し出すという快挙を成し遂げたのであり、私の考えでは、小説が発揮できる根本の力はそこにあるのだ。

【ディスカッサント】 吉川一義(京都大学)
【司会】 クリストフ・マルケ(日仏会館フランス事務所)

【共催】 日本フランス語フランス文学会、日仏会館フランス事務所

* 日仏会館フランス国立日本研究所主催の催しは特に記載のない限り、一般公開・入場無料ですが、参加にはホームページからの申込みが必須となります。