9月
25
2009
  • 協力:帝京大学
  • 講演要旨:

    欧州の通貨統合の歴史はそもそも国際的な通貨システムの失敗と密接に関係している。しかし、欧州連邦の構想が拒否されたのにもかかわらず、欧州連合はなぜ単一通貨を採用したのか疑問は残る。事実、国家も人民も単一通貨を望まなかった。銀行と実業界の支持を背景に、政治リーダーたちが導入したのだ。欧州通貨制度と経済通貨統合の導入は、ヨーロッパ共同体が「レートと物価の安定にともなう制約を尊重することで成り立つ」政策によって結束したグループとなったことを意味していた。もっとも、単一通貨を単にリベラリズムの勝利ととらえることはできない。そこに至るまでには、政治連合とも異なるヨーロッパの統一体とアイデンティティーの形成に向けた長い努力があるのだ。しかし、ヨーロッパの人々が望んだように単一通貨は統一のシンボルとはならなかった。

    単一通貨について共同で運営されるヨーロッパの機関は誕生しなかったが、それは各国の通貨および政治機構に歴然とした格差があったからである。格差と民主主義的空白のために、ヨーロッパ市民の中には、ユーロをあからさまな不信感まではいかなくとも無関心な態度で迎える人もいた。単一通貨だけでは必ずしもヨーロッパのアイデンティティーを形成することはできないのだ。

  • 講師プロフィール:

    歴史高等教育教授資格(アグレガシオン)取得、パリ第1大学で博士号を取得。現在セルジー・ポントワーズ大学教授として特に欧州建設の歴史、欧州連合の挑戦および欧州建設とフランスの関係についての講座を担当。20年近くにわたり、上記の問題について精力的に著作・論文を発表するとともに研究を続けている。今回の講演との関連では、Les fondateurs de l’Europe unie が2001年に再版されているほか、1994年には Identité et conscience européennes au XXème siècle に協力している。

  • 講演テクスト:

* 日仏会館フランス国立日本研究所主催の催しは特に記載のない限り、一般公開・入場無料ですが、参加にはホームページからの申込みが必須となります。