7月
12
2014

【要旨】
規範についての批判的省察によって始まった1960年代のフランス語による哲学は、いかにして「反文化」として理解されうるのだろうか。この反文化が切り開くもの、それは社会的、人類学的、政治的、そして認識論的な諸記述の領野における新たな教示的視点である。カンギレムによって医学的思考の領野に導入された、正常なものと病理的なものの批判はある特定の文化的場の内部での哲学の方向性という枠内において意味をなす。この哲学的言説の文脈への位置づけは、その特殊性を消し去るどころではない。むしろ支配的な知と権力の布置によって生み出される統治の諸方法を疑問に付しつつ、批判の射程を更新するのである。この文脈化が行きつくのは、それによってわれわれの知が周縁にある人々を排除する身ぶりにおいて形成されるような諸限界の歴史(フーコー)である。それはまたマイナーなあり方の理論(ドゥルーズ、ガタリ)を、あるいはテクストの周縁性についての分析(デリダ)をももたらす。同じくそれが可能にしたのは、さまざまな支配を疑問に付す呼びかけの政治化であり、それはモニック・ウィティッグのフェミニスト哲学が明確に表現している。規範についてのこれらの変奏の目的に共通するのは、差異の生産への呼びかけであり、これらの差異は多数派の装置へと割り当てられることから逃れるさまざまな方法として理解される。

【プロフィール】
ギョーム・ルブランは1966年生まれの哲学者。現在ボルドー・モンテーニュ大学哲学科教授、京都薬科大学客員教授。ジョルジュ・カンギレムの研究よりキャリアを始め、認識論、社会哲学、政治哲学など幅広い領域で精力的に活動している。主な著書は以下の通り。
La philosophie comme contre-culture (PUF, 2014)
Que faire de notre vulnérabilité ? (Bayard, 2011)
Dedans, dehors. La condition d’étranger ( Seuil, 2010)
Canguilhem et la vie humaine (PUF, 2010)
L’invisibilité sociale (PUF, 2009)
Les maladies de l’homme normal (Vrin, 2007)
L’esprit des sciences humaines (PUF, 2005)
La pensée Foucault (Ellipses, 2006)

【ディスカッサント】
坂本尚志(京都薬科大学)

【主催】 日仏会館フランス事務所
【協力】 京都薬科大学
【助成】 日本学術振興会平成26 年度外国人招へい研究者事業(短期)
【後援】 日仏哲学会

* 日仏会館フランス国立日本研究所主催の催しは特に記載のない限り、一般公開・入場無料ですが、参加にはホームページからの申込みが必須となります。