2月
14
2025

大都市圏の外延的拡大と大都市圏内の機能分化に特徴づけられた20世紀の都市の構造は,21世紀に入り大きな転換期を迎えている。この中で,長期的に衰退傾向が継続する縮退都市化,大都市圏内での分断化,これに加えて日本では1970~80年代に開発された外部郊外での住民および建造環境の高齢化が顕著となっている。地方都市では,空き家や空き地の増加,中心市街地の衰退などが問題視されてきた。この背景には,グローバリゼーションにともなう都市間競争に打ち勝つために規制緩和と都心再開発を好む起業家的都市化が進んだことがある。その結果,継続的に都市への資本投下が続いた都心部と続かなかった郊外,特に大都市圏の外延的拡大が最大限となって生じた外部郊外とでは,居住環境上の明暗が生じている。しかしながら,2020年代にはいり,一部の郊外地区では,データセンターおよび流通拠点として新たな開発が進む地区や,隣接自治体で就業する若年核家族世帯による住宅取得先として評価されるようになり人口増加に転ずる住宅地区も確認されるようになってきた。後者の代表例が竜ケ崎ニュータウンである。本講義では,東京大都市圏の外部郊外にあたる龍ケ崎市における実証研究を中心に,郊外住宅地の将来像を検討する。

久保倫子は、日本の地域計画および都市計画を専門とする地理学者。筑波大学で地理学博士号を取得後、岐阜大学で助教を務める。現在、筑波大学生命環境系助教。フルブライトジャパン奨学生としてイリノイ大学シカゴ校で学び、2022 年には、パリで開催された国際地理学連合 100 周年学会で若手研究者賞を受賞。日本の都市の衰退や垂直化について多くの論文や作品を発表。主な著書に、Divided Tokyo: Disparities in Living Conditions in the City Center and the Shrinking Suburbs(Springer, 2020年)、由井義通教授と共同監修した The Rise in Vacant Housing in Post-growth Japan: Housing Market, Urban Policy, Revitalizing Aging Cities(Springer, 2020年)などがある。

 

【講師】久保倫子(筑波大学)
【司会】ラファエル・ランギヨン(日仏会館・フランス国立日本研究所)
【主催】日仏会館・フランス国立日本研究所

* 日仏会館フランス国立日本研究所主催の催しは特に記載のない限り、一般公開・入場無料ですが、参加にはホームページからの申込みが必須となります。