2月
28
2014

【要旨】
1952年の第4作となる『ジブラルタルの水夫』以降、マルグリット・デュラスは彼女の後の作品全体にみられるような独自の美学を確立する。欲望とエクリチュールが一体となり、不在、すなわち他者の不在と同様に言語の不在を共鳴させる。書くことは、オルフェの神話に深く結びついており、絶えず自らを消滅の危機に対峙させることでしか可能ではない。「それは不可能なこと。しかし成就する」という一節が『船舶ナイト号』の中にもある。彼女自身における創造行為の条件もまたこのようなものであった。すべて存在するものは不在の光に包まれており、この不在は脅威であるとともに存在に意味を与えている。

【プロフィール】
ベルナール・アラゼ氏はヌーヴェル・ソルボンヌ大学(パリ第3大学)フランス文学部准教授。専門はデュラス、サロート、ジュネ。エルヌ手帖デュラス号(2005年)、および『マルグリット・デュラスの作品―1940年から2006年までの作品と批評文献』(Imec[現代出版史資料館]、2009年)の共同監修を務める。『シリーズ―マルグリット・デュラス』叢書(レットル・モデルヌ・ミナール社刊)の監修を務め、これまで4巻を刊行。プレイヤード叢書のデュラス全集の編集にも携わる。

【司会】 澤田直(立教大学)
【共催】 立教大学、日仏会館フランス事務所

※ マルグリット・デュラス生誕100周年国際シンポジウム
2014年3月1日(土)10時〜18時
立教大学池袋キャンパス太刀川記念ホール

* 日仏会館フランス国立日本研究所主催の催しは特に記載のない限り、一般公開・入場無料ですが、参加にはホームページからの申込みが必須となります。