〈翻訳家は裏切り者〉ではない。決して裏切らないために翻訳するのである。
〈世界文学〉を支える翻訳とはいかにして行われるのか――古典、詩歌、小説、思想、映画、そして創作にいたるまで、ある言語が別の言語と通いあう道なき道を模索し、苦闘の末に言葉を見出した翻訳家たちの冒険の記録!
【目次】
序 翻訳という幸福の瞬間 澤田直
Ⅰ 翻訳史から見える展望
『フランス語翻訳史』を書くということ――企画、方法、展望をめぐって ベルナール・バヌン
Ⅱ 作家と翻訳
文法のすれちがいと語りの声 多和田葉子
無名の手に身を委ねること 堀江敏幸
Ⅲ 初訳、再訳、新訳(古典、娯楽小説)
新訳の必要性――ラブレーの場合 宮下志朗
西鶴の文体を翻訳する ダニエル・ストリューヴ
欄外文学を翻訳する――正岡子規の『病牀六尺』 エマニュエル・ロズラン
二流文学、二流翻訳、二流読者?――娯楽小説の場合 アンヌ・バヤール゠坂井
『オペラ座の怪人』の面白さ――エンタテインメント小説の翻訳 平岡敦
プルースト邦訳の可能性 吉川一義
インタールード
出産/Naissance d’ours blancs/白熊の 多和田葉子/坂井セシル
Ⅳ 翻訳という経験と試練(思想、映画、詩)
開く、閉じる――文学と哲学を翻訳する際の差異について 澤田直
映像のような言葉――可視化された字幕のために マチュー・カペル
翻訳における他性の痕跡としての発話行為 ジャック・レヴィ
大岡信と谷川俊太郎の詩にみる言葉遊び――翻訳家の挑戦 ドミニック・パルメ
韻文口語訳の音楽――ランボー「陶酔の船」Le Bateau ivreを例に 中地義和
Ⅴ 世界文学と翻訳、残るものとその可能性
「世界文学」と「日本近代文学」 水村美苗
翻訳という名の希望 野崎歓
あとがき 坂井セシル
本書は、2018年4月に東京の日仏会館で行われた国際シンポジウム
「世界文学の可能性、日仏翻訳の遠近法」の記録集である。
詳しくはこちらをご覧ください:
http://www.suiseisha.net/blog/?p=11155