10月
23
2018

 記憶は現代社会で重要な価値を持つようになった。記憶は一種の新たな人権となり、民主的な社会の指標にもなっている。つまりそれは、知る権利や認められる権利、特定の社会集団や国家が最近あるいは過去に被った過ちや犯罪の補償を求める権利である。これまでも歴史の中に記憶が根づくことによって個人的あるいは集団的アイデンティティが形成されてきたが、近年における現在と過去との関係は今までにないような社会的要求や公共政策を生み出すようになっている。それはもはや伝統を維持したり、歴史の知識を伝えることにはとどまらず、現在の価値の名の下に歴史を書き直し、歴史の償いをすることである。  

 近著『過去との対峙』(2016年)を踏まえつつ、フランスの国民的記憶を題材にアンリ・ルッソはこの変化の理解を試みる。文化や歴史的経験の多様性にもかかわらず、それ自体が記憶装置(美術館、記念行事、祝賀行事など)のグローバル化に組み込まれているのだ。
 

【司会】剣持久木(静岡県立大学)

【主催】日仏会館・フランス国立日本研究所、在日フランス大使館/アンスティテュ・フランセ日本

【協力】日仏歴史学会

* 日仏会館フランス国立日本研究所主催の催しは特に記載のない限り、一般公開・入場無料ですが、参加にはホームページからの申込みが必須となります。