歴史記述の交差路:ジョレスとフランス革命
[講演会] エリック・アヴォカ (京都大学)
18:00 601会議室 フランス語
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要旨:
「フランス大革命史」(Histoire socialiste de la Révolution française)はフランス革命の歴史記述、フランスの政治史そして作者ジャン・ジョレスの人生において重要な句切りとなる書物である。執筆の過程においてジョレスは筋金入りの共和主義者から社会主義運動のカリスマ的指導者へと変身を遂げている。ドレフュス事件の最中に発表され、教育的かつ公民的な使命を帯びたこの書物はフランス社会主義のアイデンティティーを定義する一助となる。ここではフランス社会主義は共和政の系譜に結び付けられ、それを実現し、さらに伸展させる使命を託されているのである。一方でこの書物は歴史記述の二重の制度に属し、古典的なモデルに支配された文学と、第三共和政の大学機関によって認められたばかりの科学的プロトコールとの、唯一にして結果としては不安定な結合を体現している。世紀の狭間に生まれたこの書物は、知的教導権を求める政治家によって書かれた最後のフランス革命史であり、歴史家がその系譜に自らを位置付ける最初のフランス革命史である。
マルクス、ミシュレそしてプルタルコスの三重の影響を受けたこの作品の曖昧さと多音性(ポリフォニー)は上記のような特異な立場によるものである。背後にあるこの三者の偉大な影の交錯はまるで判じ物のようなテクストを形作っている。本講演ではそれを解読したい。
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プロフィール:
京都大学文学部准教授。高等師範学校(Ulm)修了。古典文学の高等教育教授資格(アグレガシオン)を持ち、フランス革命期の弁論家に関する論文で博士号を取得した。主要な研究テーマは弁論術およびその演劇との関係、フィクションおよび歴史記述におけるフランス革命の表象である。