ロゴタイプと表意文字:東洋と西洋の交錯

フィリップ・カントン(グルノーブル大学助教授)

シンポジウム「文字文化の再創造」,2001年4月8日,日仏会館ホールにて

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[更新:2001-03-30]


発表要旨

 東洋でも西洋でも現在、各種組織における内外の交流のために多くのロゴタイプが使われている。それは相手を特定し、視覚的コミュニケーションをはかるシステムの構成部分になったごとくである。ほとんどの場合、このシステムはあらゆる観点でそれぞれ非常に似通っている。東洋と西洋という2つの異なる世界は、視覚に対しては同一関係を保つことがまったくなく、もともと同一の表記法を持っていないにもかかわらずそうなっているのである。

 ロゴタイプの意味を正確に定義することで、さしあたり、ロゴタイプと表意文字とを比較することが可能になる。それによって、近代的表意形式としてのロゴタイプが、どういう点で表意文字を大きく継承しているのかが分かるはずである。加えて、こうした比較によって、企業組織、その商標、及び製品のために現在使われている視覚的な対象特定システムをどう理解できるかも明確になる。かくして、ロゴタイプはイメージに帰着する表記形式になるかもしれないのである。しかし日本の場合は、多くのロゴタイプが日本で現在行われている表記法と、それが伝える書記伝統と明確な関係を保っている。そこでは2種類のロゴタイプがみとめられる。一つはいわゆる「ロゴ」という、今後普遍的になる形式に従うものである。もう一つは極東の表記の特性と伝統に依拠するか、少なくともその形態を保持するものである。

 歴史、文化、表記に係わる、こうした2種類のロゴタイプの比較対照によって、イメージと表記との関係を問い直すことができるとともに、表記、対象特定、視覚的コミュニケーションを行うに際して、その他の対称的パースペクティブが開かれることにもなる。そこでは、世界的デジタル・ネットワーク化の中で表記とイメージとがますます密接に結び付けられ、表記とイメージを育んできた各文化特性が消失する危険性をはらんでいる。


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