10月
11
2012

【講師紹介】
1947年生まれ。1989年よりフランス国立東洋言語文化大学日本語•日本文化学部教授、1990−1997 年、学部長。主に明治以前の思想史と宗教学の講義担当。主な著書に「上代日本における死と葬送儀礼」(POF、1986)、「古事記神話の構造」(中央公論社、1989)、「文明ガイド — 江戸時代の日本」(美枝子•マセと共著、ベール•レートル、2006)など。

【要旨】
全く異なって見えるこの二つのテキストを対照することで、「古事記」が日本文学史の中で どんな位置を占めているかが浮き出されるだろう。「古事記」は、時に史書とされたが、本書を詳しくみればそうでないことは明らかだ。神話集と言う見方もあるが、実際は神話は上巻だけに含まれている。また、かなり不器用な注文による製作という見方もあるが、この問題は議論を呼ぶ。
  実は、「古事記」は「アエネイス」のように、起源の賛歌を用いて内乱後の新しい政権の正当化を目指す作品と考えられる。「古事記」は、ヴェルギリウスの著作のように、神代と人間が作り出す時代との間に起こる対立と反響を功名に使って、作者(たち)に代表される知識階級により創作された叙事詩の一種なのではないか、というのが私の見解である。
  「古事記」中の文章は、純粋な漢文でなく、省略語の混じる純粋ではない日本語で記されたために、古代の中国化されたエリートの好みに合わなかった。成立後十世紀以上経っての再発見は、「古事記」自体の中にある文学作品の性格を見失わせ、後世その本来の文学的地位を完全に取り戻させることができなかった。

【司会】クリストフ・マルケ(日仏会館フランス事務所所長)
【主催】国際交流基金、日仏会館フランス事務所、公益財団法人日仏会館

PDF版プログラム
国際交流基金賞について

* 日仏会館フランス国立日本研究所主催の催しは特に記載のない限り、一般公開・入場無料ですが、参加にはホームページからの申込みが必須となります。