10月
31
2012

【プロフィール】
パリ・ディドロ大学教授(現代史)、同大学のICT(Identités, Cultures, Territoiresアイデンティティー、文化、領土)研究所研究員、ロシア・コーカサス・中央ヨーロッパ研究所(CNRS-EHESS)客員研究員。文化史と国際関係史が交差する観点からフランスとロシアの研究を行う。特にソ連への旅や共産主義知識人の政治参加、フランスのスラブ研究をとおして、フランスにおけるソ連神話の形成を分析している。また、アーカイブの歴史と政策に関する研究の再生にも尽力している。

【主著】
La grande lueur à l’Est. Les Français et l’Union soviétique (1917-1939) (éditions du Seuil, collection « Archives du communisme », 1999) 、La mémoire spoliée. Les archives des Français, butin de guerre nazi puis soviétique (de 1940  à nos jours) (Payot, 2007, réédition en poche 2013)、 Les archives, Paris, (Vincent Duclert との共著、La Découverte, collection « Repères », 2011) 、  ‘Cousu de fil rouge’. Voyages des intellectuels français en Union soviétique. 150 documents inédits des archives russes, (R. Mazuy, G. Kouznetsova, E. Aniskinaとの共著、CNRS Editions, collection « mondes russes », 2012)。

【主旨】
1940年から44年にかけて、何千万冊もの本に加えて何百万枚もの公文書がヨーロッパ中でナチスによって押収された。省庁の書類、私信、ハガキ、写真など多岐にわたる押収文書は驚くべき運命をたどることとなる。パリからベルリン、ベルリンからポーランドあるいはチェコスロバキアへと何千キロも移動したあげく、赤軍によってモスクワで再び押収されることになったのである。紛失や破壊を免れたフランスの文書は、1990年代から2000年代にかけてロシア側からフランス側に返還された。

本講演では、国際関係史においても例を見ない規模で行われたこの略奪の歴史を紹介する。まず、公文書が政治的かつイデオロギー的に重要性を帯びた過程を独裁的政治体制と全体主義的政治体制を比較する観点から考察し、次いで押収された文書のソ連における運命をたどる。そして第二次世界大戦の記憶という点から、公文書が返還されることとなった理由を明らかにする。

【司会】 剣持久木(静岡県立大学)
【主催】 日仏会館フランス事務所、静岡県立大学

* 日仏会館フランス国立日本研究所主催の催しは特に記載のない限り、一般公開・入場無料ですが、参加にはホームページからの申込みが必須となります。