難破のあとで:歴史記述の新しい地平
[講演会] キャロル・グラック (コロンビア大学)
18:30 - 20:30 1階ホール 英語
【主旨】
19世紀末から現在にいたる近現代日本の歴史記述を検証してみると、他の国々のナショナル・ヒストリーと比較して、相違点と同じだけ共通点が目立つ。その理由のひとつは、国民国家の歴史が、多くの場合「近代性」を共通の枠として備えているからである。国ごとの経験は異なっていても、そこには少なくとも共通の問題が存在している。さらに、近現代史家であればどこの国の歴史家でも、同じ方法論の井戸から水を汲んでいるため、どの国に焦点をあてた歴史記述であれ、ワールドワイドで共通の概念を見出すことができる。
本講演では、こうした時間と場所を超えた共通性を浮彫りにする8つのメタヒストリー的カテゴリーを提示し、日本における歴史記述を国際比較の視点から検討する。そのうえで、結論として、きわめて創造的な歴史が書けるような新しい機運が1990年代にはじまっていることを主張する。すべての歴史的な転換点と同じように、この転換点もまた過ぎ去って行く。この転換点を活かすのは、まさに今ではないだろうか。
【プロフィール】
1941 年生れ、コロンビア大学教授。米国における日本近現代史、思想史研究の第一人者、著書に『歴史で考える』(岩波書店、2007 年)など。
【司会】 アルノ・ナンタ(フランス国立研究センター、日仏会館)
【主催】 (公財)日仏会館、日仏会館フランス事務所、中央大学文学部