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Emil Orlik (1870-1932), Portrait de l’actrice Sada Yacco, Berlin, 1901 © Theatermuseum, Wien
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川上貞奴(1871-1946)は、女性が舞台に立つことが公認され始めたばかりの明治時代において、芸者から踊り 子、そして女優へと転身していきました。あるいはその3つの役割を同時に兼ね備えていったといってもよいかも しれません。 彼女は夫の川上音二郎(1864-1911)率いる一座と共にアメリカで巡業を行い、その地で文化間の違いに衝撃を 受けます。その後彼女は、まずは1900年の万国博覧会の際に、続いて1901年から1902年までのヨーロッパ巡 業において、成功を収めました。この2度目の巡業の時に彼女は旧大陸の果てまでも赴いたのです。 20世紀初頭、彼女は西洋の大衆と芸術家の熱狂を巻き起こし、とりわけ芸術家はしきりに彼女を描こうとしまし た。その芸術家の中には例えば、若き日のパブロ・ピカソやイタリア人レオネット・カッピエロ、日本に心酔してい たオーストリア=チェコ人エミール・オルリック、さらにはドイツ人マックス・スレフォークトがいました。西洋人の眼 に彼女はジャポニスムの化身として、また幻想化された日本女性の具現として映ったのです。そして、ついには「 現実味を帯びた浮世絵」とまで騒がれ、ベル・エポックのパリでエレガントな女性たちが貞奴の名前を商標にした 着物を奪い合うまでになりました。彼女はもう一人の日本人舞踊家で女優の花子に道を拓くことにもなりました。 この花子はロダンの多くの作品にインスピレーションを与えることになるのです。 本シンポジウムでは、主題となる貞奴の枠組みに留まらず、各発表者は西洋における日本の見世物など舞台 芸術の影響の側面をジャポニスムのコンテクストの中に位置づけて再評価します。 世紀末のダンディー文筆家ロベール・ド・モンテスキューにインスピレーションを与え、今日再評価されてつつあ る日本伝統演芸、曲芸などの見世物についても取り上げます。またほとんど知られていない、ハプスブルク帝国 の3つの地方(オーストリア帝冠領)での貞奴の成功について、さらにモデルニテを探求した日本人舞踊家たちと ダンス界に革命を起こした舞踊家イザドラ・ダンカンとの邂逅についても考察します。 思いもよらない様々なレベルで影響が交差しあう―20世紀初頭の国際文化交流の一つの典型がここにあるの ではないでしょうか。
プログラム
開会の挨拶
10:00 ベルナール・トマン(日仏会館・フランス国立日本研究所)、三浦篤(東京大学)
10:30 「フランスにおける日本曲芸上演とその模倣者たちー新しい展望」 アレクシス・ドクゥール(関西外国語大学准教授))
11:00 「ジャポニスト詩人としてのロベール・ド・モンテスキュー(1855-1921):日本人アクロバットへの追憶の詩「コタキ」について」 大津順子(モンテスキュー研究者、ジャポニスム学会)
11:30 「バーサ・ラム(1869-1954)と日本と中国のパフォーマンスアート」 ヴィヴィアンヌ・ルベール(リール第3大学博士課程(美術史)/セプテントリオン歴史研究所、ジャポニスム学会)
12:00-12:30 質問、ディスカッション
12:30-13:30 昼食休憩
13:45 「松竹大谷図書館の特別資料閲覧システムについて 音貞アルバム:貞奴(1871-1946)と川上音二郎(1864-1911):アメリカとヨーロッパのツアーに関する貴重資料」 井川繭子(松竹大谷図書館)
14:15 「ボヘミア、モラヴィア、ガリシア(プラハ、ブルノ、レンベルク、クラクフ)における貞奴:忘れ去られた大成功?」 ジル・マスタルスキー(ジャポニスム学会、OAG、サイエンススコープ)
※以下については同時通訳なしの英語での発表になります。
14:45 「西洋と東洋の邂逅:イザドラ・ダンカン(1877-1927)と日本人舞踊家」
柳下惠美(早稲田大学、ジャポニスム学会)
15:15 「貞奴のワルシャワへの帰還:Komuna Warszawa Theatreでの作品『貞奴』(2019)の起源」 梅田はな(ワルシャワ大学博士課程)
15:45 質問、ディスカッション
16:15 まとめ
16:30 貞奴へのオマージュ(ダンス公演) 梅田はな(花崎流名取)『貞奴:再振付の試み』
17:00-17:15 閉会の辞
【司会】三浦篤(東京大学)、隠岐由紀子(ジャポニスム学会)、マチュー・セゲラ(IFRJ-MFJ協力研究員)、ベルナール・トマン(日仏会館・フランス国立日本研究所) 【主催】日仏会館・フランス国立日本研究所 【協力】ジャポニスム学会、サイエンススコープ、東京国際フランス学園、SEJT
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