font color=red>
*参加自由
30年来、リティ・パンは彼の故国、カンボジアの歴史をたどり続けている。記憶をたどり、呼び覚まし、蘇らせる――彼自身そこから奇跡的に逃れたクメール・ルージュ支配下のカンボジアの4年間(1975年~1979年)、その暗黒の時代からリティ・パンは記憶を救い出そうと努めてきた。タイのカンボジア難民キャンプについての初ドキュメンタリー作品『サイト2』(1989年)以来、パンは消えた名前、身体、所作を再び見いだそうと試みてきた。彼の最新作『名前のない墓』(2018年)はまさにそうした試みのひとつであり、『消えた画 クメール・ルージュの真実』(2013年)のタイトルはパンのそうした試みを端的に表現しているだろう。しかしパンにとって重要なのは、排除――それは人間そのもの、生き残ろうとする者たち、そして人間性を留めているものたち―の目的でしかないイデオロギーに隷属させられていたこの4年間が何であったのかを理解することでもあり、パンは、拷問、処刑、虐待の体験を語る当事者たちのもとを訪れ、彼らの言葉に耳を傾けた、そこで撮られたのが『S21 クレール・ルージュの虐殺者たち』(2002年)、『ドッチ 地獄の収容所長』(2011年)である。映画、アーカイヴ、アニメーション、編集の可能性、フィクション、パンは、証言者たちの時として裏表のある言動、意図的に捻じ曲げられた記憶、あるいは法の場の無能さを前にして、様々な形態、手段を見方につけながらたどってきた。パン自身が著しているように、映画はポケットの中に握りこぶしを持ち続けることを可能にしてくれる、それはまさにパンにとって生き残るための方法、暴力に屈しないための手段であるように思える。
相澤虎之助:映画監督、脚本家。映像制作集団「空族」の創立メンバー。『バビロン2 THE OZAWA』(2012年)など3本の監督作があるほか、冨田克也監督との共同脚本作品に『サウダーヂ』(2011年)、『バンコクナイツ』(2017年)がある。最近では2018年に瀬々敬久監督の『菊とギロチン』で第92回キネマ旬報ベスト・テンで日本映画脚本賞を受賞した。
【司会】マチュー・カペル(日仏会館・フランス国立日本研究所) 【主催】日仏会館・フランス国立日本研究所 【後援】在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
|