10月
25
2010
  • 講演要旨:

    今日、日本美術史家たちは「葦手」という語を、絵に文字を織り込むこと、あるいは絵の中に文字を隠し込む手法についてしばしば用いている。

    この表現方法により、絵のモチーフとテクストはただ一つの面に融合し、非常に特異な視覚の対象物が出現する。読者は、時として一見しただけでは分かりにくい形象を見出し、他の構成要素と結び付けてその作品の全体的な意味を再構成しなくてはならない。数多くの作品に見出すことのできるこの「曖昧さの技法」は、日本美術史を通観すると平安時代から明治時代にかけての長きにわたって用いられ、絵画や漆工芸などジャンルの境界を越えて見出すことができる。

    本講演では、「葦手」の例を示しつつ、それらの作品から引き出されるテクストとイマージュの関係について分析をしたい。

  • 講師プロフィール:

    パリ第7大学准教授(日本語・日本文化)であり、同大学の東洋文明研究センター(UMR8155)のメンバー。専門は古典文学および日本美術史で、この分野において数多くの研究書を編纂している。著書 À la croisée du texte et de l’image : paysages cryptiques et poèmes cachés (ashide) dans le Japon classique et médiéval (Paris, Collège de France, Bibliothèque des hautes études japonaises, 2009) により、2010年にフランス碑文・文芸アカデミーのジャン・レイノー賞および渋沢・クローデル賞を受賞。

* 日仏会館フランス国立日本研究所主催の催しは特に記載のない限り、一般公開・入場無料ですが、参加にはホームページからの申込みが必須となります。