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2019年12月02日(月) |
「バンド・デシネをフランス語で読む」第4回レポート
7月24日(水)と26日(金)の18時半から日仏会館図書室読書会「バンド・デシネをフランス語で読む」第4回を開催しました。両日とも使用したテキストは同じものです。
日仏会館図書室 読書会
バンド・デシネをフランス語で読む 第4回
日時:2019年7月24日(水)、26日(金)18時半~20時
場所:日仏会館図書室
とりあげた作品:Zviane, Apnée, Pow Pow, 2010.
参加人数:7月24日(水)16名/7月26日(金)10名
進行役:原正人氏
日仏会館図書室では、バンド・デシネをフランス語の原書で読む読書会を今年4月から開催しています。進行役を務めてくれたのはバンド・デシネの邦訳を多く手がけている原正人氏です。原氏による読書会の趣旨の説明に続いて、参加者全員に簡単に自己紹介をしていただき、読書会がスタートしました。
なお、「日仏会館図書室 読書会 バンド・デシネをフランス語で読む」は、今後も月1回ペースで開催していく予定です。ご興味のある方は、当図書室の告知をご確認のうえ、お気軽にご参加ください。
以下、原正人氏による読書会の報告です。
今回取り上げた作品は、ズヴィアンヌの『無呼吸』(Zviane, Apnée)です。2010年にカナダのモントリオールの出版社POWPOW社から出版されました。前回のミシェル・ラバリアティの『ケベックのポール』(Michel Rabagliati, Paul à Québec)に引き続き、2回連続でケベックのバンド・デシネを取り上げることになりました。
作品の翻訳はまだありませんが、ズヴィアンヌは、2017年12月9日から2018年2月20日にかけて京都国際マンガミュージアムで開催された「〈ケベック・バンド・デシネ〉を知っていますか? ―25の足跡と7人の作家から」展に合わせて来日し、日本語で読めるインタビューもあります。
海外マンガの人々―ズヴィアンヌさんインタビュー:https://comicstreet.net/interview/author/zviane/
そのインタビューによれば、『無呼吸』は彼女が鬱っぽい状況に陥っていたときに、日本のマンガ家魚喃キリコの絵に触発されて描いた作品。コンサートの企画運営会社で働くソフィーは精神を病み、一旦休職したのち、復職したところ。物語は、内省的なモノローグを織り交ぜつつ、彼女のどこか危うげな日常を静かに淡々と描いていきます。
今回、訳読の対象となったのは冒頭からP21まで。いつも通り、基本的には参加希望者に事前にテキストを渡し、予習してきてもらいました。当日その場で当てられた箇所をひとり1~数コマ単位で訳してもらい、必要に応じて文法事項や背景情報をみんなで補足し合いました。
本作は回想シーンから始まるのですが、実はそれとほぼ同じシーンが物語の終盤で改めて描かれていて、その部分を読まずに冒頭だけ読んでも意味がはっきりとはしません。また、本作は登場人物同士の会話だけで成立しているわけではなく、主人公の一人称のナレーションが頻繁に挿入され、会話とナレーションと絵が複雑に絡まりながら物語を進行していきます。こうした語り口はこの物語の内容と密接に関わっているわけですが、この読書会では本作のような語り口の作品を今まで扱ってこなかったので、少し読みにくく感じられたかもしれません。このようなときに、お互いに意見を出し合いながら理解を高められるのは、読書会の利点だと思います。
『ケベックのポール』同様、ケベックのバンド・デシネですが、ケベック特有のボキャブラリーや表現はさほど多くなく、その点では、ケベックのフランス語に慣れていない参加者にとっても読みやすかったのではないかと思います。もっとも、ところどころフランスやベルギーでは馴染みのないボキャブラリーや表現もあり、フランス語表現の多様性を学ぶいい機会になりました。
ケベックのバンド・デシネということもあり、現状、日本ではなかなか手に入れにくいですが、内省的で詩的な魅力に富んだ作品なので、機会があればぜひ読んでいただきたいです。
今後も引き続きさまざまなバンド・デシネを読んでいきたいと思います。
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