- 講演要旨:
ここ数年フランスでは、個人の問題を扱った社会学および歴史学の研究書の出版が相次いでいる(Christian Le Bart, L’Individualisation, Presses de la Fondation nationale des sciences politiques, 2008; Danilo Martucelli et François de Singly, Les Sociologies de l’individu, Armand Colin, 2009; Philippe Corcuff, Christian Le Bart et François de Singly (sous la direction de), L’Individu aujourd’hui. Débats sociologiques et contrepoints philosophiques, Presses universitaires de Rennes, 2010 など)。それらのアプローチを検証した上で、いずれにおいても根本的な前提とされている点について検討する。それは、個人主義があくまでも西洋的なものだということである。議論に際しては、《全体論的》な社会とされる日本社会の例を取り上げる。本当に日本社会は個人の個別性をまったく認めていないのだろうか?
- 講師プロフィール:
フランス国立東洋語・東洋文化研究院(INALCO)教授。専門は日本文学。日本語の高等教育教授資格(アグレガシオン)審査委員長。 Les Belles-Lettres 社の「日本叢書」(Collection Japon)の創設者であり、現在もクリスチャン・ガランと共に同叢書の責任者を務めている。近代日本の大作家(森鷗外、夏目漱石、正岡子規)を研究する一方で、学際的な共同研究も行っている。現在、2冊の著書を準備中で、テーマはそれぞれ家族に関する近代日本の言説と西洋の外における個人の位置付けである。著書に Les Tourments du nom (1995)、Littérature et génie national (2005) がある。また、森鷗外の翻訳をまとめて Vengeance sur la plaine du temple Goji-in のタイトルで2008年に出版している。
- 協力:中央大学
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