- 講演要旨:
本講演は、ゴドリエ氏が2008年にロンドンの英国王立人類学協会において行ったハクスリー記念講演のテーマに基づいている。共同体、社会、文化、アイデンティティーという4つの概念をめぐる考察であるが、これらは社会科学にとどまらず政治家の演説やジャーナリズムの文章など、広く頻用される概念でもある。多様なコンテクストで繰り返し使用されるこれら4つの概念は、科学的な知の生産にとって今なお有効なのであろうか。ゴドリエ氏はそれが可能となる条件の定義付けを試みるが、その試みは1966年から1988年のあいだに通算6年以上を過ごしたパプアニューギニアのバルヤ族におけるフィールドワークに基づいた仕事に依拠している。
- 講師プロフィール:
人類学者。1990年にフンボルト賞(社会科学部門)、2001年にフランス国立科学研究センター(CNRS)のゴールド・メダルを受賞。1934年にカンブレーで生まれる。比類のない学者であり、フランス社会科学高等研究院(EHESS)の特別教授の任にある。個人の研究のみならず、今までに重要な役職を歴任し、特に1982年から1986年まではフランス国立科学研究センター(CNRS)の人文社会科学部門(Département des Sciences de l’homme et de la société)の学術ディレクターを務めた。他にも1982年にアカデミー・フランセーズ賞、2007年にパリ市勲章、また、文芸家協会の2008年度学術書大賞などを受賞。2008年には Au fondement des sociétés humaines. Ce que nous apprend l’anthropologie によりアカデミー・フランセーズの Louis Castex 賞を受賞した。
2009年にはその功績に対して合理主義学会賞(Prix de l’Union Rationaliste)が贈られた。フランス国外では、2003年に日本でiichiko文化学賞を受賞したことが特筆されるだろう。
世界各地で講演を行い、近年特に注目を集めたものとしては、2006年にジグムント・フロイト生誕150周年を記念して英国精神分析協会とロンドンのフロイト博物館が開催したシンポジウムにおける講演「フロイトと人類学:インスピレーションか口実か?Freud and anthropology: inspiration or pretext ? 」および、2008年のロンドンの英国王立人類学協会におけるハクスリー記念講演が挙げられる。
著作は数多く、La production des Grands Hommes (Fayard, 1982), L’Enigme du Don (Fayard, 1996 — 日本語訳『贈与の謎』法政大学出版局, 2000), Métamorphoses de la Parenté (Fayard, 2004), Au Fondement des sociétés humaines. Ce que nous apprend l’anthropologie. (Albin Michel, 2007), Le Corps Humain. Conçu, Supplicié, Possédé, Cannibalisé. (CNRS, 2009. 2e édition), Communauté, Société, Culture. Trois clefs pour comprendre les identités en conflits. (CNRS, 2009 — Huxley Memorial Lecture 2008), In and Out of the West. Reconstructing anthropology. (University of Virginia Press , 2009) などがある。
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